四日目 2

バスの中だけじゃなくって、とうとうこんなことまで。
この子、どこまでわたしのこと‥。

「先生、もっとちゃんと歩いてくださいよ~」
「だ、だったら‥それを離し、てッ、あァンっ」
 修学旅行もはや四日目。生徒たちも一時の興奮状態から団体行動にも余裕が見られ始め、引率役の教師陣はだからこそ気を引き締めなければならないところだ。
 まだ赴任して一年程度の桂木慶子など、よりしっかりとしていなければならないのだが。
 当の桂木先生は監視対象の問題児、明智菊丸にふらふらと揺れる身体を支えられながら歩いている体たらくだ。
「ちょっと菊丸くん、先生の様子がおかしいみたいだけど大丈夫なの?」
 そんな女教師の様子に声をかけてきたのは、本来桂木先生と同じく菊丸を監督するだろういずみである。
「いずみちゃんも心配症だなあ。ぼくがついてるんだから大丈夫だってば」
「先生、ほんとに大丈夫なんですか?」
 さらりと菊丸を無視し、どう見ても体調不良に見える担任教師へ視線を向けると、慶子はいかにも辛そうな表情を改め弱々しく微笑み「大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね?」と言われていずみも「それならいいんですけど」と納得いかないながらも頷くしかない。
「ほら、先生もこう言ってるでしょ?」
「‥どうも引っかかるのよね~。って、あんたそれいったいなに持ってるのよ?」
 この修学旅行中にすっかり立場を逆転させ保護者気取りの菊丸のしたり顔に眉根を寄せ、ふと菊丸が手にしていた細い糸に疑問を向ける。
「え? あ、これ? え、ええと、その先生のスカートの裾がほつれててさ? 変に引っ張ると解けちゃうからさ。ね、先生?」
「え、ええ。そうなのよ、いずみちゃん」
「なんか怪しいわね。先生、ほんとに変なことされてないんですか?」
「や、やだなあ、いずみちゃんっ、そんなに人を疑っても」
「あんたには聞いてないわよ」
「菊丸くんの言うとおりよ、その今回は色々助けてもらってるし、変なことなんて‥」
 慌てる菊丸を庇う慶子もいずみの視線の強さに顔を背け、段々と言葉が尻窄みになってしまう。
 見れば女教師の穿いている赤いタイトスカート裾から糸が伸びてはいるのだが、どうにも納得がいかないいずみが尚も言い募ろうとしたのだが。
「ちょっといずみ~、リンダがまた大変なのよ、早く戻ってきて~?!」
「あ、ほら、千春ちゃんが呼んでるよ、いずみちゃん。早く行かないとっ?!」
「~~~~っ、もうリンダったら! 先生、コイツが変なことしでかしたらすぐ呼んでくださいねっ」
 日本好きヤンキー娘ことリンダの勘違い行動は修学旅行先で余すことなく発揮され、いずみも菊丸への注意がどうしても疎かになっていたのである。最後に担任教師へそう言い残すと、別の意味での問題児の元へ駆けてゆくのであった。

 

「あ~やばかった。あいかわらずいずみちゃんはカンがいいんだから。ねえ先生?」
「あっ‥、あ、や、やめて‥っ」
 天敵が去ったことにホッと胸を撫で下ろし話題の糸をツンと引っ張ると、隣に立つ桂木先生がピクンと震え教え子に寄りかかって嫌々と首を振った。
「えへ。どうです、これ。先生といつでも仲良くなれるようにしてみたんですけど」
「あ、あ、あっ、あンッ! だ、だから引っ張らないでっ、ッぅうんっ!」
 菊丸の手に持つ糸が引かれるたび、スカートがほつれるのを心配してか美教師は膝を震わせ教え子の方を掴む手に力を入れる。しかしいくら糸を引っ張ってもスカートの裾がほつれる様子は見えない。
「質問の答になってないですよ、先生?」
「っ、こ、こんなので仲良くッ、なれるわけ‥、あ、やっ、いやっ、いやあぁんっ!」
「え~。ほら、運命の赤い糸って言うじゃないですか。これもちゃんとそこまで考えてるんですよ~?」
「な、なにが運命の、赤い糸、よっ! あれはちゃんとした、恋人‥っ、ぁ、あんたとわたしにぃっ、な、なんの関係があるって、言うのよッ!」
「ひっどいなあ。可愛い教え子の精一杯の好意をそんな無下にするなんて」
「ふざけ、ないっ、い、イィッ! あ、あ、あっ、やっ、やぁんっ、い、いやあぁんっ!」
 ムッと顔を顰めた菊丸にピンと糸を張られ、慶子は美貌を引き攣らせて教え子にしがみつきハイヒールの踵で踏ん張りながら、背を反らすと「も、もういやよっ!」と泣きじゃくってしまう。
「でへ。こうすると先生とますますくっつけるじゃないですか?」
「しゅ、修学旅行中なのよ、こ、こんなことして、見つかったらっ‥! だ、だから引っ張らない、でって‥いってる、のよッ?! ぁ、あ、あッ、何度言ってッ、い、いやっ、菊丸っ!」
「大丈夫ですって。ぼくが先生の面倒見てるのも当たり前になってるし。今だってこうやってちゃあんと先生の面倒見てるでしょ♪」
「~~っ、あ、あんたって子は‥っ!?」
 たしかに傍から見ればフラフラと危なっかしい女教師を支えているように見えているだろう。
 それもこの旅行中に見慣れた光景であればいまさら注意を払う者もそうはいない。唯一そこを怪しむだろういずみもリンダのお陰で菊丸まで手が回らないのも好都合だ。
「そんなことより糸の調子はどうですか? ちゃんとパンティの位置調整できてます?」
 そう。伸びていた糸はスカートのほつれなどではなく、さらに奥。
 慶子が穿いている特製数珠パンティに繋がっていたのである。菊丸は夜毎の位置調整でも満足せず、こうして日中も担任教師のために結んだ糸で数珠の位置を整えようと試みたのだ。
「よ、よけいなお世話よっ、も、もういいでしょっ? いいかげんにしてっ!」
「もう。さっきから人の好意を‥。ちょっとお仕置きが必要ですね♪」
 息も絶え絶えになりながら、それでも気丈に教え子を見据えしっかりと言い放つ。
 普段ならその剣幕に腰の引けるところだが、いまや女教師の運命はまさに菊丸が手綱を握っているのも同然。女教師の細腰を抱きとめ、より密着すると菊丸は糸をただ引くだけではなく歌でも歌うように一定の韻律を刻み始める。
「ちょっ?! やっ、やめ‥っ、あ、あ、だめっ、だめぇっ!」
 効果覿面。慶子もまた菊丸の糸の動きに合わせ愛らしい声で鳴き始め、堪らずに自分からも教え子に密着するよう抱きついていた。
 まるでスカートの中が見えているように大事な部分に喰い込む数珠を操られ、擦られるたびに慶子は「あ、あっ、いやっ、いやぁあん!」と美しい街並みを見せる修学旅行先で昼日中から受ける簡易乾布摩擦に泣きじゃくってしまう。
「先生、学校のみんなはともかく、見られちゃってますよん?」
「‥え? あ。や、い、いやっ、み、見ないで‥っ」
 言われて周囲に目を向ければ数こそ少ないが、自分たちを遠巻きに見る観光客の姿に気づく。生徒たちは菊丸の計画通りに注意を向けなくなっていたが、一般客からすれば昼間から抱き合う二人の姿はどうしても目立つ。
 それも一方は珍妙な生き物。もう一人はとんでもない美女なのだから。
 だが幸い場所が場所だけに映画の撮影だとでも思っているのか近づく者もなく、二人がなにをしているのかまでは気付かれてはいないようだ。
「でへ、せっかくだしぼくらの仲のいいところを見せつけちゃいましょ♪」
「なっ! う、嘘でしょ?! お願い菊丸くん、こんなところでなんて嫌ッ、あ、ああっ、許してッ」
「だ~め。お仕置きだって言ったでしょ。さ、先生、もっと可愛いとこ見せてあげましょう」
「い、いやっ、いやっ、き、菊丸くんっ、ゆ、許して、こんなのだめえっ!」
 必死の哀願ももちろん菊丸を止めるには至らない。むしろ愛らしく泣き喚く女教師が可愛くてならず、糸の動きを加速させ数珠で大事な部分を擦り上げてゆくのだった。
(だ、だめ‥っ、こんなとこで、わたしっ、あ、あ、くるっちゃう)
 数珠パンティのことを知られる羞恥を上回る辱めに、いずみに助けを求めなかった自分が悔やまれる。
 七つも年下の教え子が、まさかここまでしてくるなどさすがに想像もしていなかった。修学旅行で躾けるという菊丸の言葉の意味をいまさらながら思い知り、まだ残る数日でなにをされるかと不安も襲ってくる数珠の刺激に塗り潰されてしまう。
「だ、だめっ、あ、あ、ほんとにもうだめっ! 菊丸くんっ、お、お願いッ、あ、やっ、だめっ、ね、ねえっ!」
 もう自分がなにを言っているのかもわからず、必死に教え子にしがみつきタイトスカートに包まれたお尻を揺らし続ける。
「でへへ。ほんと可愛いんだから。さ、楽になりましょ、セ~ンセ♪」
 クイッと限界まで糸を引き、伸び切った糸をピンと弾く。
「あっ!」
「必殺菊丸流津軽三味線~~~っ♪」
 叫ぶと、見えない譜面を読むように軽快に糸を弾き、数珠パンティにおぞましい振動波を与える菊丸。
「ひっ、い、イィッ、ァ、アッ、あ、あ。い、いやっ、いや‥っ、も、もうだめっ、き、きくまる、きくまるううっ!」
 女の急所を襲う処理しきれない刺激にとうとう慶子は全身を小刻みに摩擦させ、抱きとめられた身体を弓なりに反らすと見られていることも忘れて教え子の名前を泣き叫んでいた。
 女教師の美脚はいつの間にか菊丸に絡みつき、回した両腕は教え子の頭を抱え込んでいる。
「ちゃんと教えたでしょ、先生?」
「あ、あっ、き、菊丸っ、わ、わたし‥っ」
「遠慮しないの」
「き、菊丸、きくまるっ、きくまるうぅっ! ‥‥っ」
 口惜しくて堪らないのか、目元を赤らめほつれた亜麻色の髪をべったりと額に張り付かせて教え子を睨みつけ、それでも25歳の女教師は教え子に教えられたとおり、恥ずかしそうに小さく口にしてしまう。
「よく出来ました♪」
 そのあまりに愛らしい姿に菊丸も相好を崩し、ご褒美とばかりにもう一度津軽三味線を奏で始める。
「う、嘘ッ?! まだ‥するつも、りなのっ? あ、やぁ、ンッ! も、もうやッ、いやっ、き、菊丸くんっ、やめ‥っ、わたし、またっ‥」
「ありゃ、もうですか? あんなに嫌がってたくせに」
「だ、だって、こ、こんな‥っ、や、やめっ、ほんとにくるっちゃう、わたし、だめになっちゃうっ!」
「遠慮しないでいいってば。先生の可愛いとこなら何回だって見てあげますって」
 言いながら今日はこれで何回目でしたっけ? と笑われピンと弦を弾かれる。
「い、言わないでっ!」
 バスを降りてからだけで二度も晒してしまう恥に慶子は白い歯を軋らせ口惜しがる。しかし、またも弾かれる糸に腰を浮かせ「う、うっ」と呻きを洩らしブルブルと汗に濡れ透けたブラウスを見せつけるように背を反らしていた。
「だ、だめっ、ねえ、慶子、もう‥っ、菊丸くん! ~~~っ!」
 と教え子からの指示もないのに、教えられた言葉を口にして立ったまま泣きじゃくる。
「ありゃ、いくらなんでも恥ずかしくないんですか、け・い・こ・ちゃん♪」
「ああっ、き、菊丸くんが言えって! あ、あっ、もうやめてっ、わたし、また‥っ」
「でへ。何度だったいいんですよ~。さ、もっと大きな声で、みんなにも聞こえるように言ってみましょうね~♪」
「あ、あ、あ! い、いやっいやぁっ! ゆ、許して、ほんとに言っちゃうっ、言っちゃううぅっ!」
 さすがに生徒たちに聞かせたくないのか、必死に泣きじゃくりながら菊丸にしがみつくのを楽しげに見守る。
(ほんと可愛いんだから♪)
 このまま追い詰めて本当にみんなに気付かせてやってもよいのだが、今後のこともある。なにより菊丸もこんな可愛い担任を他の生徒に見せるつもりはない。
「えへ、しょうがないなあ。さ、こっちこっち♪」
「あぁっん‥っ! ど、どこに、あ、引っ張らないでぇっ」
 糸を引きつつ、担任教師を物陰へと連れ込むと。
「ここなら大丈夫ですよん。さ、ぼくと先生の赤い糸でた~っぷり楽しんでくださいね?」
「だ、だから、あんたとわたしはそんな関係じゃ‥っ、あ、あっ‥、いやっ、ああん」
 赤い糸を見せつけ、ゆっくりと手繰って大事な部分に喰い込む数珠紐を刺激すると口では否定しながら女教師はまたビクンっと仰け反って教え子に抱きついてしまう。
「またそんな強情を。ほい、津軽三味線~~♪」
「あっ、ひ、ひいっ、ぃ、~~~っ! や、やめっ、いやっ、いやぁあっ!」
 ビィンと激しく糸を爪弾かれ、数珠紐を通して女教師の敏感過ぎる部分に与えられる感覚に慶子は泣き喚き、菊丸をさらに強く引き寄せギュウッとしがみつく。
「ただの生徒とこんな風に抱き合わないでしょ。まさにただならぬ関係ですなあ」
「あ、あんたのせ‥いぃっ‥! あっ、あ、だ、だめっ! ああん、菊丸っ‥んっ?!」
 ニマニマと笑いかけられ、悔しさに歯噛みするも事実正常な師弟関係ならありえない状態に追い込まれている弱みに顔を背けるのを無理矢理に見詰め合わされる。そしてそのまま唇を奪われてしまう。
「んっ、ん、ムッ、むっ、~~~~~~~~~~~っ!」
 ピッタリと密着しながら、器用に赤い糸を爪弾かれ。
(だ、だめっ、もうだめぇッ‥! わたし、どうなっちゃうのよっ、菊丸っ、菊丸ウッ!)
 人目から隠れた安心感。菊丸のおかげで漏れ出ることのなくなった叫びとに後押しされ、慶子は津軽三味線の音色に合わせるかのように亜麻色の髪を振り乱し、教え子と合わせた唇の間から涎を垂らしてくぐもった呻きを漏らす。
 まさに運命に導かれた想い人同士のように抱き合いつつ、いやらしくお尻をうねらせ泣きじゃくり、担任教師は教え子を楽しませる楽器と化してゆく。
 再びバスに乗り込むまでの間、菊丸は物陰で愛らしく鳴く美楽器を爪弾いてはからかい、その度に悔しそうに、しかし堪えきれずに泣き喚き予想以上に愛らしくなってゆく担任教師に笑みが止まらず、次の計画に思いを馳せるのだった。

わ、わたし、どうなっちゃうの? このままじゃほんとにだめになっちゃう‥っ、あ、あン、きくまるうぅ。

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