特訓

 か、桂木慶子です‥っ、あ、あ! ご、ごめんなさいっ、いまはちょっと‥、あ、だめっ!

「~~~~~~~っ!!」
 悔しさを滲ませた、それでいて甘い悲鳴が講談高校英語教師、桂木慶子の住まう寝室に響き渡る。
 ベッドに腰掛けた教え子、明智菊丸の膝上に乗せ上げられたまま、女教師は縄がけされ身動きの取れない身体をブルブルと震わせ、大事な場所に擦りつけられる瘤縄を引かれるたび「い、いやっ、もういやっ!」と泣きじゃくった。
「んもう。我慢しなくちゃ駄目でしょ。こんなんじゃまた舞台で恥かいちゃいますよ?」
「だ、だったら、こ、こんな瘤付けたりしないでっ!」
 菊丸のお小言に、女教師はキッと眦を釣り上げて背後の教え子を睨みつけるのだが。
「でへへ。この瘤が料理長とぼくの腹踊りの違いなんですよん。こうすると素人の先生でも芸に色気が出るんですよね~」
「あっ、あ! や、やめっ、やめてっ!」
 縄を絞り上げ、女教師の一番の急所に瘤を擦り当てながら、腹踊りの心得を伝授していく菊丸。
「いいですか、先生。ぼくら素人じゃ料理長の伝統芸には及びません。もちろんいずみちゃんの若さにも先生じゃ及ばない」
「ひ、ひいっ!」
「そのためにもこの瘤付きロープは先生には必要なんですよ。お客さんたちだって喜んでたじゃないですか♪」
「ふ、ふざけないでっ! こ、こんなの腹踊りなんかじゃっ、あ、ああン! こ、擦らないでっ、だめっ、だめえっ!」
「お客さんが期待しているのは菊丸流腹踊りなんです。さ、続けますよん」
 そう言って我儘ばかりの女教師との問答を打ち切ると、再び菊丸流腹踊り創始者として慶子に稽古をつけてゆくのだ。

 そうなんです。
 このあいだ、こいつが勝手に引き受けた腹踊りのアルバイト。その特訓中なの。
 学校にいる間は特訓しない代わりに、わたしのマンションで終電まで、あっ、あ、休ませて、くれなッ、い、いぃっ!
「あっ、あっ、ああっン、き、菊丸っ、ゆ、許してっ、もうだめっ、だめぇっ!」
「何回言ったらわかるんですか。いいですか、これは先生が宴会場で我慢するための特訓なんですよ?」
「そ、そんなこと言ったって、あ、あぁあっん! あ、いやっ! き、きくまるうっ!」
 教え子が呆れるのも構わず、慶子はM字型に開いた両脚を引き攣らせ、瘤縄の喰い込んだ大事な部分を突き出してブルブルッと摩擦する。
「しょうがないなあ。先生、お客さんたちにちゃんとお詫びしないと」
「お、お客様ッ! け、慶子はまた恥をかきましたっ、ゆ、許してッ、あ、あ、いやっ、菊丸っ、擦っちゃ嫌っ!」
 膝上でのたうちながら謝罪する女教師を、しかし菊丸は一時も許すつもりはないようで、手にしたロープをグイグイっと容赦なく引き絞った。
「腹踊りは最低でも二時間は踊らなきゃいけないのに、さっきから一曲だって踊りきれてないじゃないですか! そんなことじゃ立派な宴会芸者になれませんよっ!」
「そ、そんなのに‥なるつもりっ、ないわよっ! あ、あン、ああっん‥」
 歯を軋らせながら、それでも教え子のふざけた台詞へ反応する担任に、菊丸はといえば思わず口端が緩むのを止められない。
(でへ。先生にそのつもりがなくても、もう予約がいっぱいなんですよ~)
 料理長と交わした契約で桂木先生の腹踊りは数カ月先まで予約され、恐らくは評判が評判を呼んでさらにその先も女教師の予定を奪うはずだ。慶子の意思によらず、旅館の花形スターの道は約束されているのである。
 だからこそお客を失望させないためにも菊丸流腹踊りを極めてもらわなくては。
 だというのに、この女教師ときたら‥。
「い、いやっ! 引っ張っちゃ‥っ、あ、あ、あ~~~っ!」
 瘤縄を引っ張り上げ、大事なところに喰い込ませただけでこれである。
 暴れる担任教師を抱きすくめ、ついでに縄に絞り出されラグビーボールのように変形した胸乳を根本から絞り上げるように揉みしだきながら、喰い込ませた瘤縄でさらに女の急所を擦り上げた。
「ひっ、ひいぃっ!」
「我慢我慢♪」
 悲鳴を上げビクンッと膝上で仰け反る慶子をあやしつつ、ゆっくりとしかし確実に急所を責め上げては優しく声をかけてやる。
「あっ、あ、いやぁっ! だめ、も、もうだめえっ!」
「あ、先生?!」
 せっかくの声かけも虚しく、25歳の女教師は教え子の膝上でのたうちながら、白い喉を見せて声にならない叫びを上げてしまうのだ。
「~~~~~~っ!!」
 白い余計な贅肉の一切ない腹部が波打ち、大きく割り開かれた両の脚がピーンと突っ張り、ブルッ、ブルと何度も細かく汗まみれの裸身が小刻みに摩擦する。
「あ、あっ、あ!」
 さっきの菊丸からの教えも忘れて、腹踊りを見に来てくれたお客に無様を晒した謝罪すら口にもしない。
「まったくもう」
 ガシガシと頭を掻いて、覚えの悪い担任に溜息を吐き、チラと時計を見やる。
「明日は土曜だし、今日は泊まっていきますね。さ、先生、続けますよ」
「そ、そんなっ、いやよ! お願い、休ませて、ねえ、菊丸くん!」
「だ~め。せめて一曲分我慢できるようになるまで休ませんよ」
 そう言って菊丸は再び手に持つ縄を引き絞り、腹踊り特訓を再開するのである。
 菊丸とて高校生、遊びたい盛りだと言うのに貴重な休日を潰されてしまうというのに。

 頑張れ菊丸! 負けるな菊丸! 腹踊りを待つ宴会客たちのためにっ!