今回のあれやこれやはハートキャッチというエッチ漫画のラブコメとしての構造的欠陥についてお話したいと思います。
管理人は少年誌においてエッチ漫画は大義名分としてそれ以外のテーマを持っているという話を何度かしています。
その多くは恋愛要素を含んでいることが多く、これは同時にエッチな主人公の弱みにも繋がる要素にもなる便利なものです。
代表はハートキャッチいずみちゃんの先輩格であり、月刊少年マガジン誌をエッチ漫画化に導いた代表格でもあるoh! 透明人間で、これは主人公である荒方透留が同居人でありいとこの萩谷良江ちゃんとの恋愛模様を描いていたりもします。
月刊マガジンのライバルである月刊少年ジャンプで連載されたやるっきゃ騎士でも主人公誠豪介が美咲静香ちゃんとの恋愛を描いていました。
もちろん恋愛要素のない作品もあります。
この場合はほとんどが主人公が女性であり、別の目的、つまりはルナ先生やその気にさせてよマイmy舞に代表されるような人助けを主目的にするようなものや立派な警察官になるといった二人におまかせのような作品があげられます。
全くの例外は自分の知るところではマチコ先生くらいではないでしょうか。
ただエッチ漫画の元祖であろう永井先生の著作のほとんどはこの要素はほとんどなく、あくまでエッチのためのエッチとギャグが混在する形です。
これは永井先生の卓絶した才能のなせる業なのであまり作劇としては参考になりません。
さて、ここまでは何度も語っている通りでして、ではハートキャッチはなぜこの恋愛要素が通用しないのかという話をしたいと思います。
前述までの透明人間ややるっきゃ、あるいは他の恋愛要素を持つエッチ漫画は主人公の破天荒さを示すものでありますが、実際は人間的な側面を見せていてそれが好きな人に嫌われたくはないという心理的な制御をかけて主人公とその想い人の間での駆け引き、つまり透明人間であれば透明になれるという秘密がばれてはおしまいですし、豪介であれば静香ちゃんに嫌われたくはないという心理が暴走に歯止めをかけています。
翻って菊丸はと言えば、少なくとも恋愛要素のあった序盤はともかく後半に入るとそうした制御からは解き放たれ、暴走が止まらない状態となっています。
これはいずみちゃんに嫌われたくはないという心理描写が一切ないことからも伺えます。
しかしこれはあくまで菊丸の心理的問題であって恋愛漫画としての構造的欠陥とはなりません。
では構造的欠陥はなにかと言えば、これはタイトルにもあるハートキャッチ能力、つまり本来の主人公であるいずみちゃんの心を読む能力にあります。
透明人間、あるいはどっきりマイクローンのように主人公が摩訶不思議な能力を持っていて、その力で好きな女の子の窮地を救うといったことから恋愛感情が増してゆくというのが、エッチ漫画における恋愛要素の軸の一つです。
管理人が透明人間の主人公が嫌いなのは透明になって裸を覗き放題、かつそのせいでヒロインが危機的状況を迎えることもあるのに、何故かヒロイン側は救われたと勘違いを起こして絆を深めていく点で、ひどいマッチポンプを見せられた気になるからです。
似たような作品であるどっきりマイクローンでは主人公の健司くんは不気味な人形遣いとして認知され女生徒たちからの人気は急降下するというそれなりの罰を受けているので、桃子ちゃんというヒロインに好かれる展開も納得したのですが。
話を戻します。
この勘違いがハートキャッチでは起こらないのです。
例えば菊丸が悪戯の過程でいずみを助けるような展開があったとして。
いずみちゃんは事の真相を自身の能力で見抜けてしまうため、恋愛漫画の展開に陥らないのですね。
これをはっきりとやったのがいずみのお見合い話だった「お見合い妨害作戦!!」でいずみは一応結婚詐欺師の魔の手から救われた結果になっているのですが、その過程を知っているため感謝をするどころか借りを作ったという認識となっていました。
つまり菊丸が、少なくとも他の作品のように下心から発展した人助けをしたとしてもいずみには全てお見通しになってしまうのです。
これがエッチ漫画の恋愛漫画手法としては構造的欠陥となるカラクリだと思っています。
まあ菊丸がもう少しまともな人間なら、心を読むことで逆に恋愛が発展することもあったとは思うのですが、いずみの能力と菊丸の人格破綻ぶりとが見事に噛み合ってハートキャッチを恋愛要素から離してしまったわけで、これは喜ぶべきか、悲しむべきか難しいところですね。
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