あれやこれや 菊丸編2

あれやこれや考察
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菊丸についてのあれやこれや

 菊丸はこの手の作品として極めて特殊な位置付けに居る「主人公」です。

 通常この種類の作品は少年誌の枠組みを超えないためか、一応の骨格として大体の場合恋愛要素という括りに当て嵌まるように作られています。
 同時期に連載していた「oh!透明人間」や「やるっきゃ騎士」などがそうですし、そうでなくとも「ルナ先生」や「瞳ダイアリー」「その気にさせてよ」などのように人助けを主体とするような別要素を与えられており、ハートキャッチのようにこの枠から外れた作品はまず見当たりません。

 菊丸の場合、なにが特殊な位置付なのかといえば、作品内での枷がないという点にあります。

 主人公が特殊な能力を持っている場合、そのほとんどが何らかの制限をもっています。
 イクラを食べると透明になれる「oh! 透明人間」では、主人公が興奮すると効力が切れますし、小人になれる「どっきりマイクローン」では時間制限が設けられています。「おじゃまユーレイくん」では他人に一定時間憑依しないと存在が消えてしまうという弱点が。
 主人公が女性の「どっきんロリポップ」ですら瞬間移動の際、服を移動対象と認識しないため裸になってしまうという弱みがあります。

 またそうした能力をもたない主人公であったとしても、これは先の恋愛要素が大きな要因となって主人公を縛り付ける形をとっています。
 いわゆる惚れた弱みというやつです。
 これは「オヤマ菊之助」(微妙ですが、一応キクノスケサンで天敵と結婚していたので)や「ピヨリタン」などがそれにあたります。
 マチコ先生の場合はケンタを教師役のマチコが諌めるという、一応の体裁が整っているので大きく外れていることはないと思います。

 さて菊丸です。
 作中で特殊な能力を持つのは、菊丸ではなく本来の主人公である原田いずみで心を読む能力を持ち合わせています。
 ハートキャッチはいずみの超能力と菊丸の悪戯という対立構造が成立していたのはご承知の通り。
 そしてこの心を読む能力が連載途中から機能しなくなったことも、周知のことと思います。
 しかし菊丸の悪戯は続きます。というよりこの悪戯が作品の要となってしまいました。
 菊丸にとっても作品にとっても、純粋な意味での天敵、制限が消えてしまったということになります。

 ではいわゆる精神面での枷はどうでしょう。
 確かにいずみを天敵としてはいますが、これはいずみに嫌われたくはない、という心情からくるものではなく、ただこれまでの関係性からの惰性によって育まれた苦手意識からくるものです。
 これは作中でいずみの怒声に条件反射を示す描写からも窺がえます。
 菊丸へお仕置きを行うのがいずみ一人ではないという点でも、天敵ではあっても弱点ではないわけです。

 それにしてもいずみたちにとって幸いなのは菊丸の精神性が極めて常識的範疇に収まっている点でしょう。

 ここで述べたように、根本的な部分で菊丸が暴走した場合、それを止める決定的な手段はありません。
 確かにいずみへの潜在的な苦手意識がありますがこれが絶対ではないのは読者諸氏も周知のとおりで、どころかいずみと菊丸の間の力関係に徐々にではありますが逆転現象が起こっているのも見逃せず、いずみ自身が悪戯に巻き込まれている場合、基本的には菊丸へ反抗しきれていないのです。

 つまり、もし菊丸が本気で暴走を始めた場合、いずみたちは成すがままになってしまう可能性が非常に大きいのです。

 結局、菊丸が小者であることが救いというべきで、自身の行いが常識外れであるという認識を持っているがゆえに第三者からの指摘に対し、最後まで開き直ることが出来ないわけです。

 ところで管理人の思う菊丸の愛すべき部分がこの小市民的な、いや等身大で悪戯を行使する捨て身の人間性にあると感じております。
 と、言いますのも、菊丸の悪戯は物語的に間違いなく「悪いこと」なわけです。
 これは結果論としてみても、ほとんどの場合で事態が好転することに一役買ったということもなく、ただただ騒ぎを大きくするだけです。
 しかしながら、同系列他作品では不思議なことに主人公のこうした行いが「結果として」主人公の評価をあげるものになることが少なくありません。
 同誌連載作品であった透明人間などはその傾向が顕著で、透明になり覗きをするという菊丸以下の行為をしながら、例えば誘拐犯を捕まえたり、文化祭の危機を救ったりと想い人である良江ちゃんの評価まで上がり、最終的には恋人となり続編では結婚までしています。
 はっきり言って糞野郎です。つか、続編では青年誌ということもあり婚約者(良江ちゃん)がいるのにより過激な行為に至っています。多分に透明人間が知名度は高くてもファンサイトを見ない理由がこれではないかと思っております。
 その透明人間をパク‥リスペクトしていると見られるマイクローンでも結果として良い方向に転がることもありますが、これは主人公の健司くんがしっかり評価を下げているので問題はないです。

 いずれにしても、菊丸の場合は特殊な能力もなく、己が身一つで悪戯を行い、かつ周囲からの評価など気にも留めない「無敵の人」なわけです。(本来の使い方ではないですが)

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コメント

  1. Maxwell より:

    たしかに銀行強盗の時とか「お前死ぬ気かよ」って感じだ。
    それでもいたずら優先だし。w
    (透明人間=透くんならなんらかの解決に持っていくだろうと思われる)

    とはいえ、女性陣もあんまりいやそうじゃないしなあ。
    人徳なのかも。w

    • 虎馬屋@管理人 虎馬屋@管理人 より:

      >Maxwellさん

       ぼくは真面目に透くん嫌いですけど、まぁ一応事が起きれば解決しようとするとこは評価します。だいたいコイツが悪いんだけど。

       人徳ですよねえ。菊丸。