「体感ゲームは快感ゲーム?!の巻」

わたしたち、今日は新しくできたアミューズメントセンターに遊びに来てるんです。
「きゃっ、もうこのゲーム難しすぎよ!」
「いずみちゃん、そんなんじゃこのゲームはクリアできないよ」
散々な結果でゲーム機の操縦席から降りてきたいずみに菊丸は得意気に見本を見せる。驚いた事に、菊丸のプレイは見事なもので周囲からも感嘆の声が洩れるほどだった。
「うわぁ、すごいのね、菊丸くん!」
もとより菊丸への好感度の高い千春など手放しで誉めている。いずみにしても自分がプレイした後だけに菊丸の凄さを認めてはいるが、普段が普段なだけに素直に誉める気持ちにはなれなかった。
(‥菊丸くんのことだもの。どうせこの後、教えてあげるとかいいだして変なことするつもりに決まってるわ)
「ふっふっふ。このゲームは得意なんだよね。‥どう、いずみちゃん。よかったら僕がコツを教えてあげるよ」
「‥やっぱりね」
予想通りの展開で溜息交じりの呟きを漏らすいずみに、怪訝な顔で返す菊丸。
「遠慮しておくわ。菊丸くんに任せるとろくな目に遭わないもの」
冷たい声で言い放つと、悔しかったのだろう、再びコインを挿入するとゲームの操縦席へと一人乗り込んでゆく。
当てが外れた菊丸は仕方がないので、千春と二人、いずみのプレイを見続けることになるのだが、勝手が違うのだろう、いずみの運動神経をもってしても、先ほどからまるで上達したそぶりが伺えない。
それどころか内心の動揺が現れているのか、自機の動きは目に見えて悪くなっている。
「‥‥あちゃあ」
ゲーム自体のファンである菊丸にしてみると、いずみのプレイは目を覆いたくなるばかりだ。
先ほどからそこはキャンセルで、先行入力が‥などと隣の千春にはさっぱりとわからない怪呪文を呟いては、怪訝な顔をされている。
何度目かの撃沈表示の後、ようやくいずみが操縦席から降りてくる。
その顔は‥ちょっと怖い。
「菊丸くんっ!」
「は、はいっ!」
もともと整った顔立ちの彼女がこういった表情を見せると非常に怖い。特に菊丸には脊髄反射を起こすほどに刻み込まれているのもがある。
先程までのプレイをからかうことも出来ず、いずみの勢いのままに返事を返す。
「‥やっぱり教えてもらうわ‥こっちに来てちょうだい」
続きはfantiaから
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