ハートキャッチいずみちゃん SS_21

小説管理人作品
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「プロレス騒動!!の巻」


こんにちは、みんな元気?
今日は学校も終わって帰るところだったんですけど、なんだかかおるの様子がおかしいんです。

「ねえ、かおる。どうしたのよ、暗い顔しちゃって」
「あ、いずみ。それが‥」
 説明を聞き終えたいずみは難しい顔で考え込んでしまう。
 なんでもかおるの知り合いにどうしてもと頼まれてバイトを一日だけすることになったのだが、その日は自分も都合が出来てしまい出れなくなったというのだ。

 すでに契約済みで休むとなったら違約金を払わなくてはならず、かおるとしても引き受けてしまった手前いまさら無理だとも言えずに困っているのだという。
「うーん、しょうがないわね。そのアルバイト、わたしが代わってあげるわ」
「え、本当! ありがとうっ、感謝しちゃう。じゃ、向こうに連絡しておくわね」
 いずみの手を握ってうってかわって満面の笑みを浮かべるかおるは、アルバイト先の場所と内容を伝えるのだった。
 で、かおるの代わりにアルバイト先に来たんだけど‥
「なんであんたがいるのよ」
「それはこっちのセリフだよ、いずみちゃん」
 今日一緒に働くことになっているもう一人が先に控え室にいると伝えられていたのだが、そこに誰あろう菊丸がいたのだった。
 菊丸も同じような事情でこのアルバイトをすることになったという。

「いやー、やっぱりぼくといずみちゃんは運命で繋がって‥あいてて」
「それでいったいどんなことをすればいいの? 詳しく聞かされてなくてよくわからないのよね」
 さりげなく肩に回された手の甲を抓り上げながら、アルバイトの内容を尋ねてみる。
 責任者の人に尋ねようにも忙しそうに控え室に案内されて、そのまま放ったらかしにされたままなのだ。
「え、いずみちゃん、なにも知らないできたの? しょうがないなあ。あのさ‥」
 菊丸が言うにはここでは素人の格闘試合をお客さんが楽しむ場所で、かおるの知り合いというのはそこではかなりの人気を誇るらしく、今日もそれを目当ての客が大勢来ているのだそうだ。
 大っぴらには出来ないが試合ではちょっとした賭のようなものも行われているのだという。
 ところが結局代役同士の試合ということになってしまい、今もその調整に手一杯だという事らしい。
「ちょ、ちょっと待ってよ。試合って、じゃあわたしと菊丸くんでってこと?」

「そりゃそうだよ。まああくまで素人の見せ物だし、大丈夫だよ」
「う う~ん、ほんとに大丈夫かしら」
 いずみの不安を余所にようやく調整も終わったのか、一度見ただけの店長が姿を現し、菊丸の説明と同じことを矢継ぎ早に告げてゆく。
「それじゃ、さっそくで悪いけどあっちの更衣室に用意してあるコスチュームに着替えてリングに上がってくれるかな。とりあえず一時間、頑張ってくれよ。お客さんもきみに賭けてるし、バイト代も弾むからね!」
「え、あ、はい」
 ろくに返事も返せないままいずみは更衣室へと押し込まれるのだった。
「それでは皆様、お待たせいたしました! 本日は趣向を変えまして、今日が初めてという新人同士の試合となります。ベテラン選手とは違った予想もつかない展開はきっと皆様を楽しませてくれると思います! では、選手入場!!」
 会場に司会の声が高らかに響くと観客には一様に不満の色が浮かび上がっていた。
 目当ての選手が参加しないことに落胆を隠せないのだ。が、その表情もスポットライトに照らされた二人を見て、一気に払拭される。

続きはfantiaから

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