「菊丸の特製料理術?!の巻」
「おおっ、いいニオイが‥!」
「もう、きたないわねえ」
台所から漂ってきた空腹を刺激する香りに菊丸が涎を垂らして反応してするのをいずみが呆れた声を出している。

えっ、どうして菊丸くんの家にいるのかって?
それがね。連休中、菊丸くんを置いてご両親が家族旅行に行っちゃったんですって。
それでわたしと桂木先生でご飯を作りに来てあげたってわけ。
「いやー、でも助かったよ。竹丸は連れてったくせにぼくだけ置いてくんだもんなー」
「いつもイタズラばかりしてるからよ。親御さん泣いてたわよ」
そんな菊丸の愚痴に台所から応えた慶子は、旅行に出かける菊丸の両親からいつもご迷惑をと、何度も頭を下げられていたのだ。
「ちぇ。ま、いいか。おかげで先生たちの手料理が食べられるんだし」
「調子いいんだから。‥先生、もう料理の方は出来上がったんですか?」
「それが予定よりも材料使いすぎちゃって。ちょっと買い足しに行かないと」
「あ、それならわたしが買ってきます。けっきょく先生にほとんど作って貰っちゃったし」
「そう? じゃあお願いしようかしら。えっと‥」
桂木先生の口から出たいくつかの食材と調味料をメモに取ると、いずみは駅前にある大型のスーパーに出かけようとするのだが、その前に。
「‥菊丸。先生と二人っきりだからって変な真似したら承知しないわよ」
「信用ないなあ」
「あんたのなにを信用しろってのよ?」
「大丈夫よ、いずみちゃん。わたしだってそうそう好きにさせないわ」
ぼやく菊丸を半眼で見やるいずみに年上の余裕を感じさせる笑みを浮かべる桂木先生に、ようやく安心したいずみが「それじゃいってきますね」と出かけていった。
「さて、それじゃあいずみちゃんが戻ってくるまでに作れるものは作っておこうかしら」
欠食児童を相手にするだけに腕の揮い甲斐もあるのか、なかなか豪勢な食事になっていた。やはり誰かに作るというのはそれだけで楽しいものなのだ。
「先生、ぼくも手伝いますよ」
「あら、悪いわね。じゃあ、そこの黒豆を見ていてくれる?」
グツグツと煮込まれている黒豆の入った鍋を菊丸に任せると、慶子は皿を取り出して出来上がっている料理を盛り付け始める。
「う~ん、そろそろ火を止めた方がいいのかなあ。先生、これでいいですかあ‥、お、おおっ?!」
豆を小皿に取り分け、確認をして貰おうと振り向いた菊丸は女教師の後ろ姿に言葉を呑んで見入ってしまう。
あいかわらず女教師は無防備なまでに短いスカートから、すらりとした美脚を惜しげもなく晒してほんの少し屈むとわずかにスカート奥が覗けてしまいそうだった。
そうして軽快に動き回る度、きゅっと上向きに盛り上がったヒップが悩ましく揺れ、タイトスカート越しに菊丸を誘惑するかのような動きを見せる。
(おおっ、あともう少しで‥)
爪先立って飾り棚から食器を取り出そうとする女教師に近づき、下から覗こうとする菊丸。
「ねえ、菊丸くん、お鍋の方はどうなってるかしら。もう大丈夫そう? ? 菊丸くん?」
飾り戸を開けながら任せていた黒豆の様子を尋ねるが、一向に返事が返ってこない。
続きはfantiaから
コメント
ああ、そういえば無かったな、と。
単純に入れ忘れでしたか。
自分的には加筆中で完成してからお披露目なのかな、と勝手に早とちりしてました。
何はともあれ再掲載お疲れ様です。
>匿名希望さん
加筆はふと読み返している内にこんな場面が見たいという自分の欲求に従うので一瞬で終わります‥。
「言ってはいけない言葉」がここでも登場ですね。
エピローグだけでもいやらしい感じです。w
>Maxwellさん
こういうエピローグは蛇足もいいところで本来はやってはいけない類ではありますが、書きたかったので書きました。